一九九七年度秋の関東学生囲碁リーグでの十二年ぶりの優勝に、副将として大きく貢献した。囲碁ばかりでなく、スキーサークル、水泳サークルでも要職に就くという、たくさんの顔をもつ。
多くの人から「前向きすぎる」と言われているのが長所でもあり、欠点でもあると自己分析する。一、二年生のときには、授業のグループワークにも参加。自分のモットーである、「広く深く、オールマイティーに何事にもチャレンジする」を実践している。
囲碁歴は長く、七歳の時にはプロの棋士の指導を受けていた。全国大会で七位に入賞した成績も持っている。小学校を卒業するとき、プロに進むための養成所に入るか、それとも普通に進学する道を選ぶか迷った。その時に「他人のために役に立てる、世の中で必要とされる人間になりたい」と考え、悩んだ末に、プロではなく、「普通の」学生になることを決めた。
囲碁部員約四十人を部長として支え、それに加えてサークル活動や授業のグループワークと忙しい日々を送っている。「一日平均五時間くらい」という睡眠時間でも体を壊さない。そんな生活でも、勉強とラグビーと囲碁の「三足のワラジ」をはいていた中、高校時代に比べれば楽だという。
SFCにはAO入試で入学した。「全部の授業に出ているわけではないし、完璧な学生、ということでもないでしょう」と話すが、成績はむしろいい方ではないかと、やや遠慮がちに本人は言う。「やりたいことができる」とSFCの魅力を語っている。
「自分を最大限に生かせる場所。いい意味でのライバルがたくさんいて、そういう人たちと積極的に知り合っていきたい」。SFCでも、自分の持ついい意味での貪欲さを持っていきたいと話している。
卒業後は、公務員として他人のために役立つ仕事がしたいという。公務員試験合格のため、専門学校にも通いはじめた。「小さい頃は医師になりたかったが、途中で気持ちが変わった。医学で一人ひとりを診るよりも、行政の場からもっと多くの人たちの役に立っていきたい」と述べる。
目標に向かって走り続ける毎日だが、時々我が身を振り返ることがある。自分は相手から見るとどんな存在なのだろう。自分は周りにどんな印象を与えているのだろう。「囲碁の棋譜をとっているような、裏方の人の気持ちもわかるような自分でいたい」。前向きすぎるくらい前向きな自分と、時々我が身を振り返る余裕。ここが、九割以上の支持を集め囲碁部長に当選した彼の魅力なのかもしれない。