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2007/11/01
_ [Web制作] 文字の大きさ変更機能は必要か?
この数年で、「文字の大きさ変更機能」を備えた Web サイトがかなりよく見かけられるようになった。
ググってすぐ出てくるサイトだと、京都府や品川区などがある。身近なところだと、横浜市会やのびのび・ヨコハマ ライフデザインサポートサイト等もある。
これ、本当に必要なんですかね? 文字の大きさの変更って、各ブラウザが元々標準機能として備えているのに、そのコーナー固有の UI で、そのコーナーでしか働かない劣化版を別途提供することに何の意味が?
酷い場合は、font-size を px 単位で指定して、ブラウザ自身が持っているフォントサイズ変更機能を殺したうえで、そのような機能を搭載している場合もある。本末転倒だ。
似たようなことを考えてる人は少なからずいるはずだと思ってググったところ、[Saq.] 「文字の大きさを変更するボタン」は必要か?が見つかった。
- 付け方(文言・サイズ)のガイドラインはない → サイトごとにバラバラ → ユーザビリティ悪すぎ。
- ブラウザとの連携はないので、そのサイトからリンクなどで外に出ると文字サイズリセット。
- っていうか目が悪いひとは最初っからブラウザの設定で文字を大きくしてる。
- なので普通にブラウザの文字サイズを変更できるようにサイトが作られていれば何の問題もない
[[Saq.] 「文字の大きさを変更するボタン」は必要か?より引用]
禿同である。
さらにブクマコメントの
2007年04月21日 suttang デフォルトでIEの「フォントサイズ最大」とかにしている人がいるのに、font-size:12pxとか設定して、フォントサイズ変更ボタンを付けて「アクセシビリティの向上だぜ!!俺ってかっこいい」てのは愚の骨頂だと思うのですが?
[はてなブックマーク - szktkhr bookmark / 2007年04月21日より引用]
がまた禿同である。
唯一存在価値があるとすれば、
ブラウザの文字を大きくするボタンを万人がつかいこなしているというのはちょっと謎。
[[Saq.] 「文字の大きさを変更するボタン」は必要か? - ツチヤスヒロ Says:より引用]
で、そもそもブラウザの標準機能でフォントサイズを変えられることを知らない人には有益な可能性があるのだが、例えば京都府 ホームページのご利用案内 - 文字を大きくするにはや、文字の大きさ・色を変えるには | 品川区等を見ると、独自のフォントサイズ切り替えスクリプトの使い方と、ブラウザでのフォントサイズ変更の方法と、両方を解説している。
両方説明するんだったら後者だけで十分なんじゃね? 何のために無駄な手間暇を費やしてスクリプト設置したり使い方書いたりして、「文字の大きさは次の二つの方法で変更することができます」と無意味な選択肢を増やしてユーザを混乱させるんですかね?
そんな中、川崎市多摩区は偉い。無益なスクリプトではなく、汎用的なフォントサイズ変更手順を、Windows 版、Mac 版それぞれの IE、Netscape、Opera、Safari について説明しているのである。(このページが作られた時期が古いのか、Firefox がないのが残念だが)
千葉県の文字の大きさ・色や背景色を変更して読みたい方へも興味深い。
(2007/11/18追記)
使いやすさを考えてみる。(アクティブシニア・シルバー層の現場から): 印刷ボタンと文字の拡大ボタンでも、文字を大きくするボタンは一切使われていないことが書かれていた。
さて、最近、多くのページに文字サイズを大きくするボタンや印刷ボタンがつくようになりました。
しかし、このボタンを使っている人は少なくとも目の前に居ません。
みなブラウザで設定しています。
(中略)
ところが、印刷ボタン、文字のサイズ変更ボタンの利用は0人。
(中略)
彼らはインターネットの文字が小さいと言います。
しかし、多くの方はブラウザで依存しており、まさか、ウェブ上で文字の大きさを変えられるなどと思っていません。
よく「ブラウザに文字の大きさボタンをつける方が良いか否か」と相談を受けますが、ついていてもついていなくても使わないだけですのでご自由に、とお答えします。
[使いやすさを考えてみる。(アクティブシニア・シルバー層の現場から): 印刷ボタンと文字の拡大ボタンより引用]
やはりあのような独自機能は置くだけ無駄なのである。
(そんな中、あの Yahoo! 様が検索結果ページにフォントサイズ変更ボタンを設置していらっしゃることは気にかかるところではあるのだが。→ )
(2009/10/30追記)
文字拡大/縮小機能の実装を外しました - Usability Info という記事が上がっていた。
しかしながら当サイトでは、熟考を重ねた結果、このたび、この文字拡大/縮小機能の実装を外すことにしました。理由は、以下の通りです。
- 「Webページにおける文字の拡大/縮小機能」で述べたように、この手の機能は、コンテンツ(Webページ)側ではなく、本来はブラウザ側で持つべきものであること。
- 最近のブラウザでは、拡大/縮小機能のユーザーインターフェース(UI)が露出するようになってきていること。
- 最近のブラウザに実装されている拡大/縮小機能は、単に文字(テキスト)のサイズだけを変更するだけでなく、画像を含めたページ全体がサイズ変更の対象になっていること。
また、このJavaScriptによる文字拡大/縮小機能には、下記のような問題があることもわかりました。
- ドメインが変わると、文字サイズ変更設定が引き継がれない。つまり、自サイト(同一ドメイン名)の中で回遊する分には問題ないものの、他のサイト、たとえば検索エンジン、ソーシャルブックマークサイト、その他関連するサイト(たとえばホテルのサイトであれば、「楽天トラベル」「一休.com」「じゃらんnet」など)との間をユーザーが行き来しようとすると、いきなり文字が小さくなったりして、かえってユーザーにフラストレーションを与える可能性がある(昨今のWebユーザーの行動を観察すると、ひとつのサイトだけで目的を達成することはむしろ稀で、様々なサイトを行き来して情報を比較検討した上で、最終的なユーザーゴールを達成しようとします)。
- 代替スタイルシートを用意して、メインのCSSとは異なる文字サイズを設定したところ(たとえばロービジョンユーザーのために大きめの文字サイズをデフォルトにしようとしたところ)、JavaScript側の設定に引きずられてしまい、意図通りの文字サイズを実現することができない。
[文字拡大/縮小機能の実装を外しました - Usability Info より引用]
なかなかよくまとめられていると思う。
_ [Web制作] サイト独自の読み上げ機能は必要か?
同じように、様々な官公庁や大企業で、そのサイトでしか使えない音声読み上げ・文字拡大・色調変更拡張機能を提供している場合がよく見かけられる。
具体的には、「やさしいブラウザ」 (インフォ・クリエイツ) (旧「らくらくウェブ散策」 (IBM)) や ZoomSight (日立)、WebUD (富士通) だが、そのサイトでだけ音声読み上げや文字拡大・反転等ができるように制限をかけられた ActiveX コントロールを閲覧者にそれぞれインストールさせるというものだ。
これらの存在意義もかなり疑問である。
これらのソフトは、いずれもあらかじめソフトをダウンロードしなくてはならないうえに、それぞれサイトごとにソフトを用意しなくてはならないのだ。つまり、警察庁のサイトを見るときはZoomSightを、厚生労働省のサイトを見るときはらくらくウェブ散策を、広島市のサイトを見る時はWebUDを、インストールしなければならないというわけである。
[ケイゾクなるままに@ココログ: 視覚障害者に迫るスパイウェア?より引用]
というようなサービスを誰が喜んで使うのだろうか。
(変わり種として、リードスピーカーの SayIt がある。こちらは ActiveX レスで、ローカルで音声合成するのではなく、合成済みの WMA や MP3 等の音声データを送ってくる ASP サービス。そのサイトでしか使えないという点は変わらないが、ActiveX コントロールのインストールを必要としない点や、ブラウザ・プラットフォームを問わないというメリットがあるだけまだマシかもしれない。(その分、レスポンス・機能面で他のサービスに比べて大きく劣るが))
そういえば、この前第6回 A.A.O. セミナーに行った際、アライド・ブレインズの大久保さんも、この手のサービスについて「あまり意味がないのではないかと考える、なぜならそれを必要とするような人は、そのサイトに来る前に同種のソフト (当然ながら特定サイトでしか使えない欠陥品ではない) を既に導入しているから」という旨の話をされていた。
この問題については、ホームページバリアフリー度鑑定団 - 専用ツールの必要性によくまとめられていた。
まずこの手のツールは、それが組み込まれたページでなければ拡大したり音声読み上げさせたりできないんです。じゃぁ、そのページを開くまでどうやって操作しろというのでしょうか?
確かに、いくらか見えているので操作できなくはないかもしれません。でも、そのページを開くまで見えにくい状態で操作しろというのでしょうか?
それから、そのページを開けばプラグインが自動でインストールされますが、インストールするにはいくらか操作が必要です。それも見えにくい状態で操作しろということでしょうか?
あと、ブラウザやOSの環境が限定されてしまうという問題もあります。プラグインが動作する環境でないと動かせないからです。
それでも、使われていればいいんです。視力の弱い人が便利だといって使っているのならその価値があると思います。
でも、残念!!ブログのコメントにもありますが、ユーザーがそれを使っているという話は聞いたことがありません。知り合いにも弱視の人間はいますが、そういうものを使っているという話は聞いたことがありません。
だいたい特定のサイトだけ拡大してもらったり読んでもらったりしたところで、それがユーザーに受け入れられるでしょうか?
インターネットは自分のほしい情報をいろんなサイトから探し出して自由に読めるところに魅力があるんです。特定のサイトだけ拡大されたり読んだりしてくれてもユーザーとしてはあまり魅力を感じないと思います。これが使われない原因でしょう。
[ホームページバリアフリー度鑑定団 - 専用ツールの必要性より引用]
なぜこのようなツールを作成するのか。
あくまでも私の推測ですが、音声ブラウザなどを視覚障害者の個人に販売するより、WebUDや楽々ウェブ散策を自治体や企業を相手に販売する方が儲かるからです。
自治体や企業の方が資金力がありますから、アクセシビリティの名目で売り込めば多少高くても買ってくれます。事実、あるサイトの担当者に「なんでこんなものを導入したのか」と聞いたところ、「メーカーに相談したところそれを勧められた」という答えが返ってきました。
つまりユーザー側が求めているわけじゃなくて、メーカー側の利益優先で作られたものとしか思えないのです。
[ホームページバリアフリー度鑑定団 - 専用ツールの必要性より引用]
文字の大きさを変えるスクリプトも同じだろう。「当社が作るサイトには文字の大きさを変えられる機能を付けますのでアクセシブルです」と提案すれば、JIS X 8341-3 の影響でアクセシビリティへの関心が (中途半端に) 高まっている中でクライアント受けが良いのだろうし、クライアント側からも、よくわからぬままに「あれ付けてくれ」と制作会社に注文する場合もあるだろう。(というかそういう例が実際身近にあった)
利益を追求するのは悪いことではないと思います。メーカーも企業ですから、儲けがないとやっていけませんからね。
ただ、それによってアクセシビリティの本質がゆがめられるのは納得がいきません。誰も使わないようなツールを導入して
「うちのサイトはアクセシビリティに配慮しました。障害者に優しいサイトになっています。」
などともっともらしいことをいってもらっちゃ困るというのが私の意見です。
[ホームページバリアフリー度鑑定団 - 専用ツールの必要性より引用]
まったくその通りである。
クライアント側の担当者は、そのような似非アクセシビリティツールの使用を提案してくる制作会社やメーカーがあったらそこは信頼できないと考える、くらいでなければならない。
そういえば、高木浩光@自宅の日記 - 緑シグナルが点灯しないのに誰も気にしていない?という不思議に、ほぼ全ての都市銀行とネット銀行は本来行うべきセキュリティ対策を適切に行い、余計なツールを導入していないのに対し、地銀では逆に、本来行うべきセキュリティ対策を取らずに無益なツールを導入する例が散見される、という調査結果が出ており興味深いのだが、通じる物があるように思う。地銀には必要なものと余計なものを見極めらる人材がいないということなのだろう。
(2007/11/14追記)
「ブラウザの標準機能をそのまま利用することとします」?
「エンドユーザが別途ソフトを導入しているものと考えます」?
「自治体内関連部署の部長クラス」に,その主張は通じにくい。というか,その主張は通じにくい,とベンダは考える。それよりも,超先進的テクノロジによる超派手なソフトを導入しまっせ,これでお宅の自治体も全国から注目の的,という方がアピールしやすい。というか以下略。
ベンダが悪くないとは言わない。ただ,上のような構造上,糾弾したところでなかなか変わるものではない。ユーザを啓蒙し,風潮を変えていく方が実効的だと思う。
[文字の大きさ:Wind Reportより引用]
はい、全くその通りです。問題の根幹はベンダよりもそれを選定するクライアント側にあります。(最後の数段落はそれについて述べているつもりで、ベンダが一方的に悪いというような意図は元からないです)
「音声読み上げ機能等の飛び道具を用意した方が部長クラスの評価者には受けがいいだろう」というのは自然な発想だと思うし、実際そういうケースも多いのではないかと思いますが、そんな甘い囁きに負けないで欲しいものです。
またクライアント側も、評価者がそんな誤った判断を犯すことのないよう、担当者がよく学び進言していただきたいものですね。